アムホテリシンBと腎機能障害

腎機能障害を生じる機序

①遠位尿細管膜の直接障害⇒腎尿細管細胞へのNa流入増加⇒K、Mgの再吸入低下⇒低K血症、低Mg血症、尿細管性アシドーシス

②尿細管糸球体フィードバック⇒直接または間接的に輸入細動脈の収縮⇒腎灌流と濾過が低下

③炎症性サイトカインに影響を与え酸化損傷

薬剤の種類と腎機能障害の頻度

DAmB:ファンギゾンR(アムホテリシンBデオキシコール酸塩)

 ⇩腎毒性の軽減を目的として開発

・ABLC:アベルセットR(日本で承認なし)

・ABCD:アンフォテックR(日本で承認なし)

LAmB:アムビゾームR(リポソームアムホテリシンB)

  • LAmBの腎毒性はDAmBの約半分(LAmB 9-25% vs DAmB 12-50%)であり、重症度も低い
  • L-AmBまたはABLCが使用可能な場合、AmB-Dは推奨されない(NCCN Guidelines Version1.2026:Prevention and Treatment of Cancer-Related Infections)
  • アムビゾームによる日本でのAKI(KDIGO分類で評価)発症率は37% Sci Rep. 2020;10(1):15033.

アムビゾームR(L-AmB:アムホテリシンBリポソーム製剤)

  • 適応:侵襲性アスペルギルス症、カンジダ症、クリプトコッカス症、ムーコル症、FN、リーシュマニア症など
  • 副作用:腎障害、低カリウム血症、肝障害、悪寒戦慄、消化器症状(下痢、悪心嘔吐、腹痛)、Blood product transfusion reaction、頭痛、低血圧、頻脈など多数
  • アムホテリシンBをリポソーム膜に封入した薬剤

アムビゾームによるAKIリスク因子 

Sci Rep. 2020;10(1):15033.

  • L-AMB投与前のACE-I/ARB使用
  • L-AMB投与前のカルバペネム使用
  • 免疫抑制剤(タクロリムス58%, シクロスポリン29%)の併用
  • カテコラミンの併用
  • L-AMB投与量 3.52 mg/kg/日以上

*L-AMB投与前の血清K値が3.5 mEq/L未満:重症のAKI(Crが2倍以上)との関連性を認めたが、AKI発症因子ではない。

投与量:腎機能障害での用量調整は不要

  • FNの経験的治療、侵襲性真菌感染症:3-5mg/kg/日
  • ムコール症の治療:5-10mg/kg/日、6-8週間
  • クリプトコッカス髄膜炎:6mg/kg/日

<侵襲性アスペルギルス症に対するアムビゾーム投与量>

Clin Infect Dis. 2007 May 15;44(10):1289-97.

  • AmBiLoad試験:侵襲性真菌感染症(侵襲性アスペルギルス症が97%を占める)に対して14日間3mg/kg/日(通常量) vs 10mg/kg/日(高用量)投与し、その後はいずれも3mg/kg/日で治療した時の治療効果を比較
  • 結果:奏効率(通常量 50% vs 高用量 46%)、12週間生存率(通常量 72% vs 高用量 59%)に有意差は認めず。高用量投与で腎毒性や低K血症の発症率が有意に増加

⇒推奨量:2017 ESCMID-ECMM-ERSガイドラインはAmBiLoad試験より3mg/kg/日、IDSAガイドライン2016・NCCNガイドライン Version1.2026は3-5mg/kg/日

*IDSAは、侵襲性肺アスペルギルス症の第一選択薬はボリコナゾールを推奨。使用できない場合に、L-AmBを代替治療として使用

投与時の溶解方法と注意点

  • 溶解方法:アムビゾーム50mgあたり注射用水12mlに溶解し、5%ブドウ糖液(<2.5mg/kg/日では100ml、2.5mg/kg/日≦では250ml)と混合して投与
  • 注意点:投与前後には5%ブドウ糖液をフラッシュし、生理食塩水やリンゲル液などの輸液と混合しない

⇒理由:アムビゾームは生理食塩水やリンゲル液中の塩分でリポソーム構造が不安定化し薬剤沈殿を生じるから

投与時間

  • 5mg/kg/日未満は30-60分、5mg/kg/日以上は2時間

*持続点滴は腎毒性を軽減する可能性はあるが、AmBの抗真菌活性は濃度依存的であり十分な効果が得られない可能性がある ⇒投与時間延長の効果に関する答えはでていない

腎機能障害の予防としてできること

  • 腎灌流と灌流圧を保つ ⇒補液:投与前後に生理食塩水500-1,000ml投与(機序:Na負荷することで遠位尿細管においてNa⁺/K⁺の低下を軽減させ、腎細動脈の血管収縮を軽減し、尿細管糸球体フィードバックを鈍化させる)

AKIを発症した場合の対応 

Ren Fail. 2022 Dec;44(1):282-292

  • AKI発症から1週間は25~30mL/kgの補液を行う

根拠①:Crが1.5-2倍のAKIでは、AKI発症から7日間連続で10ml/kg/日以上の輸液をした場合、投与しなかった場合よりもAKIからの回復が早かった。それより重度のAKIでは10ml/kg/日以上の輸液をしてもAKIから回復せず

根拠②:AKI発症時、1日の輸液量はAKIからの回復率と正の相関を認めた。AKI発症から2日間または7日間連続して1日あたり5mL/kg~10mL/kg, ・・・, 25~30mL/kg, 30mL/kg以上(5ml/kg区切りで評価)の輸液を受けた患者におけるAKI回復の発生率を比較 ⇒1日あたり25~30mL/kgの輸液量で最もAKI回復率が高かった(2日間では57%、7日間では100%)

根拠③:補液投与期間は、2日間<5日間<7日間と7日間までは長いほどAKI回復率が高かったが、10日間以上では回復率は低下 ⇒7日間以上の補液はAKI回復率と関連がない

参考文献

  • Liposomal amphotericin B and renal safety: review of the evidence and clinical considerations. J Antimicrob Chemother. 2026 Jan 19;81(2):dkaf473. PMID: 41549663
  • Factor analysis of acute kidney injury in patients administered liposomal amphotericin B in a real-world clinical setting in Japan. Sci Rep. 2020 Sep 14;10(1):15033. PMID: 32929112
  • Association between fluid infusions and the recovery from acute kidney injury in patients administered liposomal amphotericin B: a nationwide observational study. Ren Fail. 2022 Dec;44(1):282-292. PMID: 35172680
  • Liposomal amphotericin B as initial therapy for invasive mold infection: a randomized trial comparing a high-loading dose regimen with standard dosing (AmBiLoad trial). Clin Infect Dis. 2007 May 15;44(10):1289-97. PMID: 17443465.