多発性骨髄腫:治療の概要

歴史・変遷

  • 治療の進歩により、生存期間中央値は延びている
  • 生存期間中央値:1990年代半ばまで約3年⇒高用量化学療法による自家造血幹細胞移植導入で7年に⇒近年8-10年に延びている

  • 治療目標:骨髄腫による症状をなくしQOLを保つこと
  • 治療は進歩しているが、依然として治癒できないため「できる限り深い奏功+治療効果の持続」を目指す

<治療薬とFDAによる承認年>

Cancers (Basel). 2025 Feb 5;17(3):525. より

21世紀以降の治療の治療の変遷(上から下へ)

  • プロテアソーム阻害薬(PI)+免疫調整薬(IMiDs)+ステロイドの3剤療法が標準となった
  • 抗体薬の出現により、PI or IMiDs+単クローン性抗体薬(mAb)+ステロイドの3剤療法へ
  • PI+IMiDs+単クローン性抗体薬(mAb)+ステロイドの4剤療法へ

薬剤

1)プロテアソーム阻害薬(PI:Proteasome Inhibitor)

  • ボルテゾミブ Bortezomib(ベルケイド)〔B/V〕 皮下注射
  • カルフィルゾミブ Carfilzomib(カイプロリス)〔K〕 点滴
  • イキサゾミブ Ixazomib(ニンラーロ)〔I〕 内服

2)免疫調整薬(IMiDs:Immunomodulatory Drugs)

  • サリドマイド:単剤でしか使わない
  • レナリドミド Lenalidomide(レブラミド)〔L/R〕
  • ポマリドミド Pomalidomide(ポマリスト)〔P〕

*レナリドミド、ポマリドミドはサリドマイドの誘導体

<薬剤適正管理> 

  • これらの薬剤は催奇形性が強いため、胎児への薬剤曝露を防ぐために適正管理手順が策定されている
  • サリドマイドはTERMS〔タームス〕(サリドマイド適正管理手順)、レナリドミドやポマリドミドはRevMate〔レブメイト〕(レナリドミド・ポマリドミド適正管理手順)で薬剤管理されている
  • 登録医師しか処方できず、責任薬剤師の登録も必要。患者もレブメイトカードが通院の際に必要。
  • 患者区分に応じた妊娠回避が必要
  • 治療中止時の残薬は返却する必要があり、紛失時はRevMateセンターに報告をしなければならない

RevMate®(レブメイト®)|ブリストル マイヤーズ スクイブ

3)単クローン性抗体薬(mAb)

<抗SLAMF7抗体>

  • エロツズマブ Elotuzumab(エムプリシティ)〔Elo〕

<抗CD38抗体>

  • ダラツムマブ Daratumumab(ダラキューロ)〔DARA〕
  • イサツキシマブ Isatuximab(サークリサ)〔Isa〕

*SLAMF7とCD38はほぼ全ての骨髄腫細胞に発現している

多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版より

「抗体薬の名前について」

INN: International Nonproprietary Nameの命名規則に基づいて作られた⇒現在はこの命名方法は廃止

例)ri-tu-xi-mab

「構成:〇-(対象疾患や臓器)-(どの生物のDNA由来か)-mab」

〇:特に厳密な意味を持たない接頭語、薬剤ごとに識別しやすいよう付けられている

対象疾患や臓器

 tu:tumor(腫瘍)、li:immune(免疫系)、ci:cardiovascular(循環器)

どの生物のDNA由来か

 mo:mouse(マウス由来)、xi:chimeric(キメラ抗体)、zu:humanized(ヒト化抗体)、u:fully human(完全ヒト抗体)

mab:monoclonal antibody モノクローナル抗体

4)二重特異性抗体(BsAbs:Bispecific Antibodies)

<BCMA×CD3>

  • エルラナタマブ Elranatamab(エルレフィオ)
  • テクリスタマブ Teclistamab(テクベイリ)

<GPRC5D×CD3>

  • タルケタマブ Talquetamab(タービー)

「Triple-class exposure」

  • PI、IMiDs(レナリドミド or ポマリドミド)、抗CD38抗体の3系統の治療歴があることを指す
  • CAR-T療法、二重特異性抗体(BsAbs)は、Triple-class exposureでないと使用できない

「penta-refractory」

  • Key drug 5剤全てに抵抗性となった状態
  • 5剤:PI(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ)、IMiDs(レナリドミド 、ポマリドミド)、抗CD38抗体薬(ダラツムマブ or サツキシマブ)

5)キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T:Chimeric Antigen Receptor T-cell)療法

  • Abecma(ide-cel:idecabtagene vicleucel)
  • Carvykti(cilta-cel:ciltacabtagene autoleucel)

6)ステロイド

  • レナデックス Lenadex(デキサメタゾン)〔D〕

用語MEMO

NDMM:Newly Diagnosed Multiple Myeloma(新規診断MM)

  • TE-NDMM(Transplant-Eligible NDMM)自家移植適応あり
  • TI-NDMM(Transplant-Ineligible NDMM)自家移植適応なし

RRMM:Relapsed/Refractory Multiple Myeloma(再発・難治性MM)

RMM:Relapsed Multiple Myeloma(再発MM)

治療アルゴリズム

日本骨髄腫学会ホームページより引用

・Dara-VRd=Dara-BLD、Isa-VRd=Isa-BLD

  • 移植適応のある新規診断患者(NDMM)におけるDara-VRd療法による≥CR率は87.9%(PERSEUS試験)
  • 移植適応のない新規診断患者におけるIsa-VRd療法による≥CR率は74.7%(IMROZ試験)
  • レナリドミド抵抗性疾患の患者でCAR-T細胞療法シルタカブタゲンオートロイセル(Cilta-cel)による≥CR率は73.1%(CARTITUDE-4試験)
  • テクリスタマブで治療された再発難治性MM(RRMM)および複数の治療施行歴のある患者における≥CR率は39.4%(MajesTEC-1試験)

参考文献

・The Evolving Landscape in Multiple Myeloma: From Risk Stratification to T Cell-Directed Advanced Therapies. Cancers (Basel). 2025 Feb 5;17(3):525. PMID: 39941892.

・多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版

・日本骨髄腫学会ホームページ