【病態】骨髄中の形質細胞の異常増殖によるM蛋白血症
<形質細胞とは>
- 前駆B細胞が抗原認識した後、二次リンパ組織の胚中心へ移動し、形質細胞に分化する
- 骨髄や二次リンパ組織に存在
- 抗体(免疫グロブリン)を産生・分泌する

「Front Immunol. 2021 Sep 23;12:729143. を参考に作成」
- 抗原認識することでアポトーシスを回避することから、成熟B細胞の寿命は抗原認識に依存する(T細胞非依存性のB細胞刺激は、短命の形質細胞への分化を誘導するが、T細胞依存性の刺激は、長寿命の形質細胞へ分化誘導する)
- 長寿命の形質細胞:SLE、RA、MSなどの慢性自己免疫疾患の発症に関与 Front Immunol. 2019 Apr 24;10:788. PMID: 31068930
- 短命の形質細胞:ステロイドや細胞増殖抑制薬で減少させることが可能 Semin Immunopathol. 2014 May;36(3):277-88. PMID: 24740168.
<免疫グロブリンとは>
- 形質細胞が産生・分泌する2本の重鎖と2本の軽鎖からなるヘテロ二量体蛋白
- 抗体(antibody)と同義で使用される
構造

- 重鎖(H鎖:Heavy chain):1つの可変領域と3〜4つの定常領域(CH1〜CH3:IgG, IgA, IgDまたはCH1〜CH4:IgM, IgE)からなる。定常領域の種類で免疫グロブリンのクラス(IgG, IgA, IgM, IgD, IgE)が決定。
- 軽鎖(L鎖:Light chain):1つの可変領域と1つの定常領域からなる。κ(カッパ)鎖とλ(ラムダ)鎖の2種類。
機能での分類
- Fab領域(Fragment antigen-binding):抗原認識する細胞表面受容体⇒細胞シグナル伝達と細胞活性化を可能にする
- Fc領域(Fragment crystallizable):抗原に特異的に結合し、免疫応答を媒介する(エフェクター機能)
- 免疫グロブリンの多様性は、B細胞の分化に応じて段階的に生じる

「J Allergy Clin Immunol. 2010 Feb;125(2 Suppl 2):S41-52. より引用」
<M蛋白とは>
- 正式名称:モノクローナル免疫グロブリン(monoclonal immunoglobulin)
- 正常な形質細胞は、多様な抗原を認識し、各々に対して異なる免疫グロブリンを産生するため、ポリクローナルとなる。一方、多発性骨髄腫やマクログロブリン血症などの腫瘍は、単クローン性に免疫グロブリンが増殖する。
- 検出するための検査:血清蛋白電気泳動、免疫固定法、血清遊離軽鎖測定
- M蛋白の種類:12種類(IgG, IgA, IgM, IgE, IgDの5種類×κ, λの2種類+B-J κ, λの2種類)
- MMの種類:10種類(IgG, IgA, IgE, IgDの4種類×κ, λの2種類+B-J κ, λの2種類)+非分泌型(軽鎖も重鎖も作らない, nonsecretory multiple myeloma; NSMM) *IgM型はマクログロブリン血症となるため含まない。
⇒MMをM蛋白の種類で分類する理由:予後が異なるから

<Bence Jones蛋白とは>
- 形質細胞のクローン性増殖によって過剰産生され、尿中に検出される単クローン性の遊離免疫グロブリン軽鎖(κ鎖またはλ鎖)
- 正常では免疫グロブリンは重鎖と軽鎖から構成されるが、形質細胞の異常増殖で軽鎖が過剰産生されると、重鎖と結合しない遊離軽鎖が血中に増加し、尿中排泄される。その尿中の単クローン性遊離軽鎖がB-J蛋白
- 英国の内科医 Henry Bence Jonesが発見
- 構造:L鎖の二量体が多く、単量体や四量体(ごくまれ)のことも
- 単量体や二量体のBJ蛋白は分子量が小さく、容易に尿中排泄され、BJ蛋白が尿細管細胞に取り込まれて直接障害し、管腔内では円柱形成し尿細管に詰まって円柱腎症(骨髄腫腎)を生じる
【検査】蛋白細胞解離から疑う
Step1)生化学:蛋白細胞解離
「総蛋白=アルブミン+グロブリン」
*グロブリンは、α1、α2、β、γグロブリンなどのサブタイプに分類
- 血漿蛋白の多くは肝細胞で合成され、肝細胞で合成される蛋白の中でアルブミンが最も多い。
- 血清総蛋白の中でアルブミンに次いで多いのは、形質細胞から産生される免疫グロブリン(γグロブリン)
⇒総蛋白とアルブミンの値に解離がある場合には、免疫グロブリンの異常が予想される
*M蛋白の存在により総蛋白が高値となることがほとんどだが、Bence Jones型や非分泌型骨髄腫では正常免疫グロブリンが抑制され、逆に総蛋白量が減少することもある。
<尿検査からBJ蛋白の存在を疑う状況>
尿定性では陰性だけど、尿蛋白定量では陽性の場合(尿定性検査では尿アルブミンを検出するため、BJ蛋白では偽陰性となる)
Step2)免疫グロブリン(IgG, IgA, IgM)測定
- IgDは定量不可能。IgEは測定可能だがIgE型は稀⇒初回は提出してもよい
- 目的:免疫グロブリンの増加の確認+増加がモノクローナルかポリクローナルかの推定
- 結果の解釈:
IgGが上昇しその他の免疫グロブリン(IgA, IgMなど)は低下⇒モノクローナル
IgG, IgA, IgMが全て増加⇒ポリクローナル
Step3)血清蛋白分画(血清蛋白電気泳動 SPEP)
血清蛋白分画(血清蛋白電気泳動 SPEP:Serum Protein Electrophoresis)
- 目的:免疫グロブリン定量値からM蛋白を疑う場合にM蛋白の検出・定量をする。
- 特徴:M蛋白の存在は分かるが、M蛋白の種類やモノクローナルかどうかは分からない。
- 結果の解釈
正常

M蛋白を認める場合
通常はheavy chainも伴うためγグロブリン分画が突出

- Am Fam Physician. 2005 Jan 1;71(1):105-12. PMID: 15663032
Step4)免疫固定法(IFE:immunofixation electrophoresis)
- 目的:SPEPやUPEPでM蛋白を認めた際に、M蛋白の型を特定する(Bence Jones型はUPEPでないと分からない)。IMWG基準におけるCR以上の治療効果判定において必須の項目。
- 特徴:SPEPよりも感度が高い。微量なM蛋白検出に優れる。
- NCCNガイドライン、IMWGガイドラインでは、最大の感度を得るために血清と尿の両方で免疫固定法を実施することを推奨
- 方法:血清や尿蛋白を電気泳動で分画した後、抗IgG, IgA, IgM, κ, λ血清を直接塗布して抗原抗体反応を行い、免疫沈降物を染色し検出する
- 注意点:ダラツムマブ、リツキシマブなど治療用モノクローナル抗体がM蛋白として検出される可能性がある

左図:血清が抗IgG, 抗κ抗体と反応したライン(赤矢印)を認める⇒IgG-κ型
右図:尿が抗κ抗体と反応したライン(黒矢印)のみ認める⇒κ型Bence Jones蛋白
「図:多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版より引用し作成」
この検査でいずれも陰性であり、IgD型、IgE型を疑う場合は、追加検査を依頼する
Step5)尿中蛋白電気泳動(UPEP:Urine Protein Electrophoresis)
- 目的:Bence Jones蛋白の検出
- 免疫固定法でIgG型, IgA型, IgM型のM蛋白を認めない場合に、IgD型, IgE型, Bence Jones型である可能性を疑い施行
- 結果:BJ蛋白があればγ分画が突出する(糖尿病性腎症などでは尿蛋白は主にアルブミンからなるため、アルブミン分画が上昇する)

Step6)血清遊離軽鎖(sFLC)測定
- 血清遊離軽鎖(sFLC):免疫グロブリンの軽鎖
- 特徴:尿検査よりも感度が高い。診断時の値は予後予測にも使用
- 正常値:κ/λ 0.26-1.65
- 炎症や腎機能障害でのsFLC血中濃度上昇は、κ鎖とλ鎖はいずれも上昇⇒ κ/λは正常
- 形質細胞増殖性疾患では、単クローン性のFLC産生⇒ κ/λは異常値になる
Step7)骨髄検査
- 目的:MGUSかMMかの鑑別
Step8)骨病変の評価
- 単純X線、CT、PET/CT
- MRI:SLiM基準に含まれる
【参考文献】
- Front Immunol. 2021 Sep 23;12:729143. PMID: 34630404
- Front Immunol. 2019 Apr 24;10:788. PMID: 31068930
- J Allergy Clin Immunol. 2010 Feb;125(2 Suppl 2):S41-52. PMID: 20176268
- Am Fam Physician. 2005 Jan 1;71(1):105-12. PMID: 15663032
- 多発性骨髄腫の診療指針2024 第6版