目次
延長しているのはPT・APTT単独か, 両方かcheck

凝固カスケードとビタミンK依存性凝固因子/凝固阻止因子について

*注意点:採血量の不足、多血症患者では、上清血漿中のクエン酸ナトリウム濃度が高くなり、凝固時間(PT, APTTいずれも)が延長することがある
PT:prothrombin time
- 外因系凝固機序を反映した検査
- 外因系+共通系凝固因子(第Ⅶ, Ⅹ, Ⅴ, Ⅱ,Ⅰ)の活性低下で延長
- 基準値:10-12秒(試薬により異なる)、PT-INR 1.0
<PT-INR(PT-international normalized retio, 国際標準比)>
- ワルファリン内服時の換算式であり、肝疾患やDICでは用いない
- PTは試薬によって正常値が異なるため施設間比較ができない ⇒試薬による差を調整した値がPT-INRであり、施設間でも差が生じにくい
<PT比>
- PT比=患者PT/正常PT
- 急性期DIC診断基準、日本血栓止血学会の新DIC診断基準で用いる
- DICでは、PT-INRでも値にばらつきが出るため、PT比を用いる
<PT%>
- 正常対照血漿の希釈検量線から求めた値
- 施設間差を少なくするために使用されたが、実際には施設間差が大きく、推奨されない
PT延長の原因
*1~3では通常PT延長が目立つが、重症例ではAPTTも延長
1)ビタミンK欠乏症
- 疑う場合は、PT, APTT, PIVKA-Ⅱを測定。APTTも延長していれば重症。ビタミンK投与でPTが短縮することを確認できれば診断、短縮しなければビタミンK欠乏ではない。
2)ビタミンKエポキシド還元酵素阻害:ワルファリン、セフメタゾール、セフォペラゾン
3)肝不全、低栄養
- 肝臓で凝固因子は産生されるため、PT・APTTが延長する。特に第Ⅶ因子は半減期が短いためPTは延長しやすい(Child-Pugh分類にはPT活性値が含まれる)
4)DIC
- 疑う場合は、血小板数, PT, APTT, FDP, D-dimer, フィブリノゲン, 可溶性フィブリン, AT, TAT, PICを測定
5)第Ⅶ因子の欠損症またはインヒビター
- 第Ⅶ因子インヒビターの存在は後天性、先天性とも極めて稀
- 欠損症かインヒビターの存在かの鑑別は、クロスミキシング試験(PT混合試験)で行う
APTT:activated partial thromboplastin time
- 内因系凝固機序を反映した検査
- 内因系+共通系凝固因子(第Ⅻ, Ⅺ, Ⅸ, Ⅷ, Ⅹ, Ⅴ, Ⅱ,Ⅰ)の活性低下で延長
- 基準値:30-40秒(試薬により異なる)
APTT単独延長の原因
1)内因系凝固因子欠乏
- Ⅷ:血友病A(先天性)、von Willbrand病(第Ⅷ因子のキャリアであるvWFの異常により第Ⅷ因子低下)
- Ⅸ:血友病B(先天性)
- 第Ⅺ因子欠症(出血症状が軽度、術前検査で指摘されることが多い)
2)接触因子欠乏
- 第Ⅻ因子欠乏(出血傾向も血栓傾向も示さず術前検査で指摘が多い。出血の原因にならないためFⅫ活性が1%で大手術をする場合も治療は不要)
- プレカリクレイン欠乏
- 高分子キニノゲン欠乏
3)内因系凝固因子インヒビター
- Ⅷ:後天性血友病A(成人以降に出現した出血傾向で疑う)
- Ⅸ:発症率のデータが不足するほどかなり稀
4)ループスアンチコアグラント(最多)
- 術前スクリーニングで発見されるAPTT延長の原因として最多(84.3%:Int J Hematol 2026)
- 出血症状は伴わず、血栓傾向となる
5)抗凝固薬:ヘパリン、ダビガトラン、アルガトロバン、Ⅹa阻害薬の一部
クロスミキシング試験(交差混合試験)
CMT:cross mixing test
- 目的:インヒビターか凝固因子欠損かを鑑別するスクリーニング検査であり、APTTまたはPTの延長の鑑別に用いる。APTT延長時に用いることが多くAPTT-CMTについて述べる
- 方法:患者の血漿と正常血漿(コントロール血漿)を混合しAPTTを測定する。混合直後にAPTT測定する即時反応、37度2時間インキュベーション後に測定する遅延反応を測定。患者の血漿の混合比率は、即時反応では5ポイント(0%, 10%, 20%, 50%, 100%=0:10, 1:9, 2:8, 5:5, 10:0)、遅延反応では3ポイント(0%, 50%, 100%)が最低でも必要。
- 原理:患者の血漿割合や混合サンプルのインキュベーション時間などで凝固時間の延長の仕方が変化するため、そのパターンで凝固阻害物質を推定
- 結果の解釈:グラフから視覚的に判断

1)即時反応、遅延反応とも下に凸:凝固因子欠損
- 原理:患者のAPTTは延長するが、少量のコントロール血漿の混合で欠乏凝固因子が補正され、APTTは改善
- 疾患:先天性血友病A、先天性血友病B
2)即時反応、遅延反応とも上に凸または直線:ループスアンチコアグラント
- 原理:少量の患者のループスアンチコアグラントがコントロール血漿のリン脂質を阻害し、即時にAPTTが延長する
3)患者血漿50%のポイントで即時反応と遅延反応に乖離:凝固因子インヒビター
- 即時反応は内因系凝固因子欠乏状態となるが、遅延反応では抗原(凝固因子)・抗体(抗凝固因子抗体)が生じて凝固因子活性が抑制されることでAPTTが延長する
- 疾患:後天性血友病A

急性出血+APTT単独延長の対応
Step1:先天性血友病、薬剤性、ループスアンチコアグラント(血栓症、流産歴)を病歴で確認
Step2:FFP投与
- 後天性血友病は、凝固因子補充に抵抗性の重度の出血となる
- ループスアンチコアグラントは重度の出血はまれ
Step3:FFPへの反応性が不良であれば後天性血友病Aとしての対応を行う
- クロスミキシング試験は夜間できないことも多い
- 後天性血友病では、止血治療としてFFP投与は効果がなく、バイパス止血製剤の投与が必要
PT, APTT両方の延長
1)共通系凝固因子の欠損症またはインヒビター
- 共通系凝固因子:Ⅹ, Ⅴ, Ⅱ(プロトロンビン),Ⅰ(フィブリノゲン)
2)DOAC内服
- 内服2-3時間後の血中濃度がピークとなる時間帯で最も延長しやすい(ワルファリンと異なり、値が一定しない)
- ダビガトランはPTよりもAPTTの方が延長しやすい(理由は不明)
- リバーロキサバンはPT延長が目立つ
3)DIC
4以下は通常PT延長が目立つが、重症例ではAPTTも延長
4)ビタミンK欠乏症
5)ビタミンKエポキシド還元酵素阻害:ワルファリン、セフメタゾール、セフォペラゾン
6)肝不全、低栄養
参考文献
- 臨床に直結する血栓止血学 改訂3版
- Role of cross-mixing tests in differentiating etiologies of prolonged aPTT: a single-center retrospective study. Int J Hematol. 2026 May 28. PMID: 42204127.