- アスペルギルスの分生子(胞子)は環境中に広く存在:土壌、空気、建材など
- 経気道感染で増殖
- 肺、副鼻腔に定着
- 臨床症状は宿主の免疫反応に依存 ⇒幅広い臨床症候群
- 癌治療の進歩によるリスクの長期化、新しい免疫療法の開発、アスペルギルス症の診断法の改良によって、アスペルギルス症の症例数は年々増加傾向

目次
菌種と特徴
侵襲性感染症で頻度が高いもの
- Aspergillus fumigatus complex(アスペルギルス・フミガタス):侵襲性感染症で最多。肺で最も一般的。
- A. flavus(アスペルギルス・フラーブス):2番目に多い。より大きな気道や副鼻腔の感染症を生じる。熱傷創にもコロニー形成。
- A. niger(アスペルギルス・ニガー):3番目に多い。熱傷創は一般にA. flavusとA. niger
- A. terreus(アスペルギルス・テレウス)
<cryptic species:隠蔽種>
- 以前は表現型的方法(真菌培養、顕微鏡での糸状菌検出)のみで同定していたが、分子生物学的方法(PCR、遺伝子解析)により明らかとなった表現的検査では区別が難しい新種の細菌
- 全アスペルギルス分離株の11-15%
- 抗真菌薬に耐性を示すことが多く、同定することが重要
臨床症候群とリスク因子

- イブルチニブなどのブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤は、侵襲性アスペルギルス症だけでなく、播種性疾患や中枢神経系疾患の発症のリスク因子⇒イブルチニブ治療中に抗真菌薬の予防投与をする施設もある
- フルダラビンは、1〜2年持続する定量的および定性的なT細胞欠陥を引き起こすプリンアナログであり、アスペルギルス症との関連が指摘されている
- ベネトクラクス(BCL2阻害剤)は、侵襲性アスペルギルス症やその他の日和見感染症のリスク因子となる可能性がある
- CAR-T療法は、侵襲性アスペルギルス症のリスク因子。ほとんどの感染症合併症は、好中球減少症の初期段階またはサイトカイン放出症候群の発症直後に発生。
- 単球・マクロファージ機能に関与する薬剤は侵襲性アスペルギルス症の最大のリスクとなり、1型ヘルパーT細胞免疫を損なう薬剤も感染リスクとなる
検査・診断
- 免疫抑制状態の患者は症状に乏しく、早期診断には疑うことが重要
- 画像:肺や副鼻腔の感染症の評価に重要
<アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 ABPA:allergic bronchopulmonary aspergillosis>
- アスペルギルス抗原に対する感作を検査で確認+臨床所見+画像所見で診断
- アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM:Allergic bronchopulmonary mycosis):アスペルギルス以外も含む。近年アスペルギルス以外の真菌も起因菌となることが分かったためABPMという概念ができた。
<侵襲性アスペルギルス症>
培養、病理
- 検体採取が困難
⇩
- 非侵襲的検査(GM抗原、β-D-グルカン、PCR)も使用
- これらの検査の感度は変動(宿主の免疫状態、侵襲部位、抗真菌薬の使用状況〔予防内服や治療〕、検体の種類、検査室によって)
- 検査の併用:高リスク患者に対し、週1回の血清GM抗原検査または血清 or 全血PCR法を施行した場合、単一検査による感度は、血清GM検査で92%、PCR法で84% ⇒両検査を同時に行い、いずれかが陽性の場合、感度は99%に上昇、両検査が陽性の場合、特異度は98%に上昇
- 高リスク患者の連続スクリーニングにも有用
アスペルギルスガラクトマンナン(GM)抗原
- 検体:血清または気管支肺胞洗浄(BAL:bronchoalveolar lavage)液
- 感度:患者集団によって著しく異なる!(臨床的に最も重要)。血清では好中球数が低いほど上昇。BAL液は宿主の要因に依存しない

医学事始より引用
- 偽陽性:他の真菌症(Fusarium、Penicilium、histoplasma、blastomyces)やAMPC/CVA(アモキシシリン・クラブラン酸)との交差反応、新生児のBifidobacterium定着、BAL液にPlasmalyteを使用。 *現在、TAZ/PIPCとの交差反応は稀(製品開発により)
- 血清GM抗原の吸光度指数(GMI)は、診断時のベースライン値+治療中の経時的推移の両方とも予後予測に有用 ⇒血液悪性腫瘍・造血幹細胞移植患者では連続モニタリング推奨(IDSAガイドライン) *BAL液についてはエビデンスが限定的

- 診断時GMI≥2.0は、30日死亡率(調整OR 2.06)、90日死亡率(調整OR 2.33)、院内死亡率(調整OR 2.99)の全てと有意に関連(IPA患者268例対象)
- 治療7日目のGMI≥1.5は、30日死亡率(調整OR 2.34)、90日死亡率(調整OR 2.24)、院内死亡率(調整OR 2.30)と有意に関連
β-D-グルカン
- 血清中に1,3-β-D-グルカンが存在することは真菌感染の存在を示すが、アスペルギルスに特異的ではない
- 検査の比較:1,3-β-d-グルカンの方が感度が高く、GM抗原検査の方が特異度が高い
PCR法
- 培養よりも感度が高いが、定着との区別ができない ⇒PCRのみではIAの診断も除外もできない
- 検査の役割が確立されておらず臨床での使用は推奨されない(Clin Infect Dis. 2016 Aug 15;63(4):e1-e60.)
CT所見
- halo sign(←):周囲にすりガラス影を伴う結節。血管侵襲の特徴。重度の好中球減少症患者に生じる
- 浸潤影、楔形梗塞
- 空洞形成(Air crescent sign):後期の所見。好中球減少症からの回復に伴い出現することが多い

- 好中球減少症の患者では、通常、治療開始後最初の1週間で大きくなり(最大4倍に拡大)、その後さらに1週間安定 ⇒患者の臨床状態が悪化しない限り、治療開始後2週間以内にCT検査を繰り返すことは推奨されない。例外)大きな血管の近くに結節が存在する場合:病変が大きくなり続けると大量喀血のリスクとなるため
参考文献
・Aspergillus Infections. N Engl J Med. 2021 Oct 14;385(16):1496-1509. PMID: 34644473.
・Guidelines for the Diagnosis and Management of Aspergillosis: 2016 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2016 Aug 15;63(4):e1-e60. PMID: 27365388
・医学事始 アスペルギルス Aspergillus(2026/5/17閲覧)https://igakukotohajime.com/2024/10/17/%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%AB%E3%82%B9-aspergillus/