G-CSF製剤

  • 2026年5月6日
  • 2026年5月28日
  • 薬剤

G-CSF:granulocyte colony-stimulating factor(顆粒球コロニー刺激因子

作用機序:好中球特異的に作用

骨髄での作用

  • 好中球前駆細胞のアポトーシス抑制+増殖刺激+分化促進
  • 骨髄通過時間の短縮
  • 成熟好中球の骨髄から末梢血への早期放出促進

成熟好中球への作用

  • 好中球機能の増強(一部は低下)
  • 好中球の形態学的変化(中毒性顆粒、左方移動:未熟な好中球が末梢血に出現)

薬理学的には用量依存性に末梢血好中球数が増加するが、臨床的には標準用量以上の高用量投与は臨床アウトカムの改善につながらないため推奨されない

適応

  • 化学療法時のFN予防(急性白血病、悪性リンパ腫など)
  • 造血幹細胞の末梢血中への動員(造血幹細胞採取)
  • 骨髄移植後の好中球数回復促進
  • 好中球減少症(MDS、AA、先天性/特発性好中球減少症)
  • HIV感染症治療に支障をきたす好中球減少症
  • 再発/難治性のAMLに対する抗悪性腫瘍薬との併用療法

3つの使い方:一次予防、二次予防、治療

  • 一次予防:化学療法開始後のFN予防目的に、好中球数や発熱の有無によらず投与。

*NCCNガイドラインではFN発症率が20%以上と推測される場合に一次予防投与推奨とあるが(G-CSF未使用時にFN発症率が20%以上の治療レジメンにおいてG-CSF使用によるFN発症率の減少効果が得られたよう)、同疾患の同レジメンでも臨床試験ごとにFN 発症率にはばらつきがあり+FNでも軽症から重症まで幅があり一律に扱い明確に評価するのは困難

  • 二次予防:前コースの化学療法でFN や高度な好中球減少をきたした場合に、次コースでFN 予防目的で投与
  • 治療:FN や高度な好中球減少を認めた際に投与

疾患やレジメンによる適応

  • 古典的Hodgkinリンパ腫のBV-AVD療法:投与することを弱く推奨(BV-AVD療法はFN発症率20%以上とされているが、ABVD療法中のG-CSF投与はブレオマイシンの薬剤性肺障害の発症頻度を高めるためルーティンでの使用は推奨されないとされているため)
  • B細胞リンパ腫、T/NK 細胞リンパ腫、再発・難治リンパ腫、ALL、好中球減少症が持続する骨髄異形成症候群:投与することを弱く推奨
  • AMLの寛解導入:投与しないことを弱く推奨 *AMLは芽球細胞表面にG-CSF受容体が発現しており、G-CSF投与でAML芽球増加をきたす懸念がある
  • AML に対するG‒CSF と化学療法の併用:行わないことを弱く推奨。Priming 効果(白血病細胞を細胞周期のS 期に導入し,細胞周期依存性薬剤の感受性を増強させる)が白血病細胞の殺細胞効果を増強し、AML の治療成績の向上につながる可能性がある。一方、治療強度の増強を目的としているため安全性への懸念がある。⇒FLAG療法といった化学療法にG-CSFを併用するレジメンもある

投与開始時の注意点

  • 投与開始:急性白血病の化学療法では、早くても化学療法終了した翌日以降で、骨髄中の芽球が十分に減少し末梢血に芽球が認められない時点から開始

製剤

短時間作用型

  • フィルグラスチム(グランR)
  • レノグラスチム(ノイトロジンR)

長時間作用型

  • ペグフィルグラスチム(ジーラスタR):化学療法1回/1サイクルでOK⇒外来治療の人に良い。次回の化学療法まで最低12日間の間隔が必要

用量:状況や疾患に応じて異なる

フィルグラスチムの例:添付文書より

  • 幹細胞採取時:400μg/m²(600μg)1日1回または2回に分割投与、5日間連日または幹細胞採取終了まで連日、皮下投与
  • 造血幹細胞移植時:300μg/m²(450μg)1日1回点滴静注、好中球数が5,000/mm³以上に増加したら症状を観察しながら投与中止
  • 急性白血病:200μg/m²(300μg)1日1回静脈内投与(点滴静注を含む)、出血傾向などの問題がない場合は100μg/m²(150μg)1日1回皮下投与
  • 悪性リンパ腫:50μg/m²(75μg)1日1回皮下投与、出血傾向などで皮下投与困難な場合は100μg/m²(150μg)1日1回静脈内投与
  • 骨髄異型性症候群:100μg/m²(150μg)1日1回点滴静注
  • 再生不良性貧血:400μg/m²(600μg)1日1回点滴静注
  • 先天性・特発性好中球減少症:50μg/m²(75μg)1日1回皮下投与

*/m²(パースクエア):体表面積あたりの投与量 

*括弧内は1.5と仮定した時の用量を記載(体表面積は1.5前後のことが多いため)

ペグフィルグラスチム(ジーラスタR)

  • 癌化学療法によるFNの発症抑制:癌化学療法終了後翌日以降、化学療法1コースあたり1回3.6mg皮下注 *化学療法後、ジーラスタ投与のために受診しなくてよいようにジーラスタボディポッドという自動で腹部に皮下注射する小型デバイスもある(化学療法時に装着して帰宅)
  • 造血幹細胞の末梢血への動員:1回7.2mg皮下注(投与日を1日目として4-6日目に末梢血幹細胞採取)

投与経路

  • 皮下または静脈内投与 ⇒基本は皮下投与(理由:皮下投与の方が、好中球数の回復にかかる時間が短いため Am. J. Hematol. 89:243–248, 2014)

副作用

頻度が高いもの

  • 血小板減少 34-38%
  • 発熱 8-48%
  • 嘔気 43%
  • 骨痛 3-30%(化学療法終了から24時間後よりも72時間後に投与した方が骨痛の発症率は有意に低下 Ann Intern Med. 2026 Mar 24. PMID: 41871353.)
  • 腰背部痛 15%、胸痛 13%、関節痛、筋肉痛 *疼痛に対してはNSAIDsでコントロール良好
  • 皮膚発疹 14%
  • 咳嗽 14%、呼吸困難 13%
  • めまい 14%
  • ALP上昇 6-11%

重篤なもの

  • 脾破裂:症例報告レベルの発症率だが、白血球数異常高値や腹部症状がある場合は腹部エコーで評価を行う。
  • ARDS
  • アナフィラキシー
  • 毛細血管漏出症候群
  • 糸球体腎炎
  • 鎌状赤血球クリーゼ
  • 大動脈炎:投与後7-15日に好発
  • 皮膚血管炎
  • MDS

UpToDate:Filgrastim (including biosimilars): Drug information(2026/4/26時点)

投与中止の基準

G-CSF投与中は週2回以上の血球数測定を行う

  • 好中球数>10,000/μl ⇒中止
  • 好中球数>5,000~7,000/μl ⇒中止検討
  • Nadirを過ぎた回復期に中止
  • 長期継続の問題点:好中球数回復後も継続すると急速な反跳性白血球増多が生じる可能性がある。好中球数>10,000/μlで追加の臨床的メリットはない。
  • 投与中止後の血球推移:好中球がアポトーシスを起こし、1-2日で好中球数が50%減少し、4日以内にベースライン値に戻ることが多い

参考文献

  • J Immunol. 2015 Aug 15;195(4):1341-9. PMID: 26254266
  • 『G-CSF 適正使用ガイドライン』2022 年10 月改訂 第2 版
  • Am. J. Hematol. 89:243–248, 2014.
  • Ann Intern Med. 2026 Mar 24. PMID: 41871353.
  • UpToDate:Filgrastim (including biosimilars): Drug information(2026/4/26時点)
  • 白血病治療マニュアル 改訂第4版