骨髄癌腫症(固形癌の骨髄転移)

BMM:Bone marrow metastasis

  • 疑う状況:MAHA, 白赤芽球症(WBC上昇と赤芽球), ALPとLDH上昇を伴う血球減少、骨痛と不明熱⇒これらがある時点で、DCBMへ進行しており、極めて予後不良…

疫学

  • 初期症状がほとんどなく見逃されやすい⇒気が付いた時には進行していることが多い
  • 剖検での疾患頻度と実際の臨床での診断頻度には解離がある(見逃されている)
  • 症例報告レべルの報告で、研究は限られており、早期診断が難しく、治療が行えず、死亡率が高い状況
  • 腺癌・未分化癌が非上皮性腫瘍よりも多い:成人では胃癌、乳癌、前立腺癌、肺癌が多い(大腸癌、肝細胞癌、膠芽腫、悪性胸膜中皮腫、耳下腺導管癌、気管支粘表皮癌、淡明細胞型腎細胞癌、非セミノーマ型精巣胚細胞腫瘍、悪性黒色腫などでも骨髄転移の報告あり)。小児では神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫が多い

病態

  • 病態:固形癌のがん細胞が血行性・リンパ性に骨髄に浸潤して生じる
  • 機序:研究が少なく未解明だが、腫瘍細胞と骨髄微小環境との相互作用が重要と考えらえている

<骨髄は癌細胞が増殖するのにいい環境>図の右上

①特異的な洞様血管構造:腫瘍細胞の捕捉を促進し転移しやすくする

②低酸素環境:低酸素誘導因子(HIF)経路を活性化⇒ニッチ形成(癌細胞が転移先で増殖しやすい環境を形成する仕組み)や腫瘍細胞の休眠、VEGFを介した血管新生増加

③その他の生物学的要因も骨髄での腫瘍細胞の定着・増殖に理想的な環境形成へ寄与している:PDGF、TGF-β、FGF、IGFなど

<DTCs : disseminated tumor cells 播種性腫瘍細胞>図の左下

  • 腫瘍細胞が原発巣から解離して循環腫瘍細胞として広がり、骨髄などの標的組織に定着する(このような腫瘍細胞をDTCsという)
  • 骨髄におけるDTCsは転移の源と考えられ、腫瘍の転移や再発のバイオマーカーや治療標的として使えるかもしれない
  • 腫瘍細胞の休眠は化学療法の効果を低下させる
  • 休眠状態の解除は長期間無症状であった乳癌をの再発を引き起こす原因の一つとされる
  • BMMは骨髄における休眠状態のDTCsの急増と関連する
  • 様々な因子(低酸素、G-CSF)が休眠状態のDTCsを増殖させる。G-CSFによって休眠状態のDTCsを誘導し、DCBM(disseminated carcinogenesis of the BM:播種性癌腫症)発症にまで至ることも

<悪循環 Vicious cycle>

  • 骨髄に腫瘍細胞が定着すると、破骨細胞の活性化増加+骨芽細胞の機能低下により、骨恒常性を破壊する
  • 腫瘍細胞が破骨細胞刺激因子(PTHrP)を分泌

⇒溶骨性因子(IL-11やRANKLなど)の産生を刺激

⇒破骨細胞生成を増加

⇒腫瘍促進性細胞増殖因子(IGFやTGF-βなど)を放出

  • 骨破壊に伴い放出されるTGF-βやIGFは腫瘍増殖をさらに促進+Jagged1経由でIL-6産生を誘発して破骨細胞分化を直接活性化
  • この悪循環はHIFシグナルにも依存し、HIF-2αは腫瘍細胞のPTHrP産生を促進、HIF-1αは破骨細胞活性化に必須とされる
  • 低酸素は破骨細胞サイトカイン(RANKL、VEGF)産生を亢進活性を高め、破骨細胞分化を抑制する骨保護因子(OPG)の産生を抑制する
  • 低酸素によって生じるアシドーシスも、破骨細胞の形成・活動性を亢進させる

症状・検査所見:特有の症状がない

  • 最も早期に出現:持続性/進行性の血球減少(特に貧血:多くは正色素性、血小板減少)⇒倦怠感、出血
  • 診断時には、症候性DCBM(disseminated carcinogenesis of the BM:播種性癌腫症)へ進行していることが多い。DICや微小血管性溶血性貧血を呈し、生命を脅かす重篤な状態となることも
  • 頻度が高い症状:骨痛移動性。機序:腫瘍細胞の骨髄浸潤による、骨内圧の急上昇+骨髄皮質の破壊)、再発性の発熱(原因:不明)
  • ALD上昇(BMMの91%で上昇、53%で正常上限の5倍以上の高値):造骨性骨転移を示唆
  • LDH上昇(89%で上昇)
  • 末梢血スメア:未熟顆粒球、未熟赤血球の出現 ⇒「白赤芽球症(leukoerythroblastosis)」
  • 平均血小板容量(MPV)の低下

診断:骨髄穿刺/生検、PET-CT

<骨髄スメア、骨髄生検> Gold standard

  • 骨髄生検の方が骨髄スメアよりも優れる(生検の方が骨髄組織を多く採取でき、検出率が上がるため。骨髄穿刺では腫瘍細胞の骨髄内沈着が限局性、dry tapで偽陰性となることがある)
  • 骨髄穿刺で陰性だが、臨床的に強く疑う場合は、疼痛の強い部位で複数回穿刺 or 生検併用が推奨される
  • 侵襲性の点から悪性腫瘍の進行のモニタリングには使用しない
  • 骨髄生検:骨髄脂肪の量的・質的変化⇒腫瘍細胞が少ない早期BMMでも有用な可能性あり

<PET-CT>

  • 非侵襲的
  • 悪性腫瘍の転移癌細胞におけるFDG集積増加を検出
  • 骨の形態変化がない時期に早期に発見できる可能性あり(骨破壊病変がない時期に骨髄病変の指摘ができる)
  • 感度:最大90%との報告も
  • デメリット:高コスト

<その他>

臓器特異的マーカーあり

予後:数か月との報告も

  • 生存期間中央値(その集団において50%の患者さんが亡くなるまでの期間:Median Survival Time)は、DCBMにまで至っていれば1.5~6カ月
  • PET-CTで診断して全身治療を行い、骨破壊性病変を生じなかった症例が24%との報告もある

治療:化学療法、分子標的薬

原発巣(腫瘍の種類含む)、全身状態、骨髄抑制の状態などを考慮して検討

  • 抗腫瘍治療は予後を改善するが、診断時点で患者はPSが悪い+骨髄造血幹細胞の障害により、貧血・血小板減少・凝固異常が進行性であるため抗腫瘍療法は困難となる
  • Eastern Cooperative Oncology Group (ECOG)によると

①原発巣が前立腺癌 or 乳癌、② 血小板数が高い、③若い、場合は生存期間が長いとされている

  • 血球減少のあるDCBMに対して化学療法は禁忌⇒支持療法を行う
  • 輸血をしたり、造血因子投与などの支持療法がQOL維持にも重要となる

参考文献

・Comprehensive review of solid tumor bone marrow metastasis. Crit Rev Oncol Hematol. 2024 Feb;194:104248. PMID: 38145832.

・The bone marrow aspirate and biopsy in the diagnosis of unsuspected nonhematologic malignancy: a clinical study of 19 cases. BMC Cancer. 2005 Nov 1;5:144. PMID: 16262899.