Step1:出血の重症度評価
<確認すること>
- 血行動態:バイタルサイン(繰り返し)
- 出血の発症時期、部位、重症度、持続しているか
- 抗凝固薬の最終投与時刻
<重篤な出血とは>
1)血行動態が不安定
2)重要臓器からの出血
◇臓器の機能障害を起こすもの
- 頭蓋内出血
- 中枢神経系出血(眼内出血、脊髄出血など)
◇止血に外科的処置が必要なもの
- 頭頚部:後鼻出血
- 心臓:心タンポナーデ
- 胸部:気道内(喀血)、血胸
- 腹部:腹腔内(腸管以外)、後腹膜
- 筋骨格系:関節内、筋肉内
3)Hb 2.0g/dL以上低下 or RBC2U以上の投与が必要
- 狭心症、心筋梗塞、心不全、末梢動脈疾患の既往歴がある心血管疾患の患者は、入院中に心血管疾患のない患者よりもヘモグロビン値の低下で死亡する可能性が高い
Step2:出血コントロール
血行動態の安定化
- 出血源への局所処置(圧迫、パッキングなど)
- 蘇生輸液(輸血)
輸血目標
- Hb>7.0g/dL(冠動脈疾患があればHb>8.0g/dL)を維持するように
- Plt>5万/μL
- fibrinogen>100 mg/dL
外傷ではトラネキサム酸
- 外傷では、3時間以内のトラネキサム酸投与は出血および全死亡率の低下と関連する
Step3:抗血栓薬の中止、拮抗薬の投与の検討
どのような対応でも本人と家族に十分説明しておくことが重要
抗血栓薬の中止継続に関しては、常に血栓症のリスクと出血のリスクを比較することが重要
- 血栓症リスク>出血リスク:抗血栓薬継続
- 血栓症リスク<出血リスク:抗血栓薬中止
- 出血リスクも血栓症リスク高い:ジャッジメント次第
<抗凝固薬導入の理由ごとの血栓高リスク>
機械弁
- 機械弁(僧帽弁 > 大動脈弁)+心房細動、高血圧、脳梗塞/TIAの既往
- ケージドボール弁、傾斜ディスク弁
- 6か月以内の脳梗塞/TIAの既往
- EF低下
生体弁
- 術後三ヶ月以内は機械弁と同じぐらい高リスク、それ以降は血栓症リスクは低い
非弁膜症性心房細動
- CHA₂DS₂-VAScスコア ≥4 の心房細動
- 3か月以内の虚血性脳梗塞/TIAの既往
- 年間脳卒中リスク ≥10%
弁膜症性心房細動(中等度以上の僧帽弁狭窄または機械弁あり)
静脈血栓塞栓症(VTE)
- 3か月以内のVTE既往
- unprovoked VTE、再発性VTEの既往
- 活動性がん
- がん関連VTEの既往
血栓塞栓症の既往があるが抗凝固療法を中断している
左室血栓
- 心筋梗塞後3か月以上経過し、左室機能が回復している場合
左房血栓
左室補助装置(LVAD)
<抗血栓薬に応じた対応>
【抗血小板薬の休薬】
- アスピリン、クロピドグレル、プラスグレルの作用持続時間から、一時的に中止しても数日間は臨床的に影響がない可能性あり。
- 例外は、チカログレル(半減期:7-9時間)
【ビタミンK拮抗薬(Wf)への拮抗】
出血リスクとPT-INR値からPCC、Vit.K投与を判断
■重度の出血あり⇒INRに関わらず、凝固因子補充+Vit.K 5-10mg静注+Wf中止
■重度の出血なし
- 9≦INR:Vit.K 2.5-5mg内服+Wf中止
- 4.5≦INR<9:Vit.K 1-2.5内服orなし+Wf中止
- INR<4.5:Wf減量のみ
1)凝固因子補充:重度の出血時はこっち
【4F-PCC:ケイセントラR】国際的に主流
- 4F-PCC:乾燥濃縮人プロトロンビン複合体
- 機序:ワーファリンが阻害する凝固因子(Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ,ⅩとプロテインC,S)が含まれており、ワーファリン作用に拮抗。
- 適応:ワーファリン内服中の重大出血合併症
- 効果発現:10分程度(FFPよりも非常に速い、血漿と比較し約25倍のビタミンK依存性因子濃度を含むため!)
- 効果持続時間:6~8時間(短い⇒必ずビタミンK製剤を併用)
- 投与量:INRと体重に応じて決定
INR 2~4 25 U/kg(最大:2,500単位)
INR 4~6 35 U/kg(最大:3,500単位)
INR >6 50 U/kg(最大:5,000単位)
- 投与速度:3IU/kg/min以下、体重70kg以上の場合210IU/minを超えない(添付文書に従って投与)
- 使用方法:付属の溶解液に溶解して使用
- 薬価が高い
- 血栓塞栓症はFFPと発症率は同等(Thromb Haemost. 2016 Oct 28;116(5):879-890. ,Acad Emerg Med. 2016 Apr;23(4):466-75.)。以前の報告は、血友病患者への長期投与の症例報告に由来。
【FFP:新鮮凍結血漿】
- オーダーしてから解凍して使用するため投与までに時間がかかる
- ビタミンK拮抗に必要な血漿量:15-30ml/kg
⇒迅速な拮抗には実用的でなく、一般に10-15ml/kgで使用
2)Vit.K製剤:即時的な改善はできない
- 作用発現:静脈投与4~6時間、経口投与18~24時間
- ワルファリンの生体内半減期は40-60時間であり、1-2日のビタミンK補充でワルファリン過剰状態から離脱することができる
- 遮光が必要:遮光のためアンプルは袋の中に入っている(投与中も遮光する)
「静注」大出血、消化管が使えない時だけ
メナテトレノン(ケイツーN®)10mg/2ml 1A
- 投与方法:ケイツー10mg + 生理食塩水50ml 30~60分かけて点滴投与
- 静注急速投与はアナフィラキシーのリスクが高く、緊急時以外は基本的に内服を優先
「内服」
- 製剤:メナテトレン(ケイツー®)5mg/1Cp、2mg/mL(シロップ)、フィトナジオン(カチーフN®、ケーワン®) 5mg/1T
【注意点】
1)ビタミンK1投与とアナフィラキシー
Clin Appl Thromb Hemost. 2018 Jan;24(1):5-12. PMID: 28301903
- 頻度:10,000回投与で3例
- 経路:静注投与で多いが、非静脈内投与でも生じる
〈ACCPガイドラインの推奨投与方法〉
- 投与量:多い方がリスク大 ⇒5-10mgでの使用
- 濃度:高い方がリスク大 ⇒少なくとも50mlの溶媒で希釈
- 投与速度:速い方がリスク大 ⇒最低20分かけて投与
2)ワルファリン過剰状態にビタミンK投与すると、出血傾向が一過性に悪化する可能性がある
- paradoxical hypercoagulabilityの逆のことが起こる:半減期が短いVII因子やプロテインCが早期に正常化する一方、IX因子・X因子・プロトロンビンが正常化するまでにはしばらく時間がかかるから
⇒なので、ビタミンK補充によってPTは速やかに改善するが、APTT延長は持続している場合も(病態としては血友病B(IX因子低下)と同様であり、止血異常が消失したとは言えない状態)
【DOACの休薬と期間・拮抗薬】
- DOACのクリアランスは腎機能に依存。透析で除去できるのはダビガトラン(プラザキサR)のみ。
- 半減期とクレアチニンクリアランス⇩

- 出血リスクと推奨休薬期間⇩

<ダビガトラン(プラザキサR)への拮抗>
1st)イダルシズマブ(プリズバインドR)
- 第IIa因子阻害剤:ダビガトラン(プラザキサR)の拮抗薬
- ダビガトランに関連する出血合併症のほとんどは、保存的治療と抗凝固剤の中止で管理できるが、重篤な出血や緊急処置時に使用
- 製剤:2.5g/50ml/V、原液で使用、混注NG
- 投与量:1回5g 急速静注または5-10分かけて投与
2nd)PCCまたはaPCC
- 用量:50 U/kg(最大投与量4,000単位)
3rd)透析
- 薬物濃度が非常に高い場合、特に腎機能障害のある患者で検討
4th)活性炭
- DOAC内服から2-4時間であれば使用可能
- 50mg
<ダビガトラン以外のDOACへの拮抗>
1st)アンデキサネットアルファ(オンデキサR)
- 第Xa因子阻害薬(アピキサバン、エドキサバン、リバロキサバン)の拮抗薬
2nd)PCCまたはaPCC
3rd)活性炭
- DOAC内服から2-4時間であれば使用可能
- 50mg
【参考文献】
- 2020 ACC Expert Consensus Decision Pathway on Management of Bleeding in Patients on Oral Anticoagulants: A Report of the American College of Cardiology Solution Set Oversight Committee. JACC. 2020 Aug, 76 (5) 594–622.
- ガイドラインCHEST2012
- 研修医のための内科診療ことはじめ