間質性肺疾患の診断・原因精査

ILD:Interstitial lung disease

定義・病態

定義:間質性肺疾患(ILD)とは、多くは肺の間質に病変を認め、間質腔に炎症や線維化を生じることでガス交換障害を生じる多様な疾患群を包括した総称

間質性肺疾患を疑う臨床症状・身体所見

<間質性肺疾患に認める臨床症状> 非特異的

*発症経過は間質性肺疾患の病型によって異なる

  • 乾性咳嗽
  • 労作時呼吸困難:体動時に出現し安静時に改善
  • 倦怠感
  • 体重減少:経過中の5%以上の体重減少は死亡リスク2.5倍(JAMA. 2024 May 21;331(19):1655-1665)

 

<間質性肺疾患に認める身体所見>

  • 頸部:中斜角筋(呼吸補助筋)の肥大
  • 呼吸音:両側下肺背側で吸気終末のfine crackles(late inspiratory crackles、Velcro-like crepitations) IPFの93%、非IPFのILDの73%に認める(JAMA. 2024 May 21;331(19):1655-1665) *線維化の早期病変ではfine crackles、蜂巣肺や拡張した気道に粘液貯留を認めるとcoarse cracklesに移行することが多い *過敏性肺炎では、高調性の吸気終末のsquawkを聴取することがある
  • ばち指:特発性肺線維症(IPF)の約1/3で認める *他の肺疾患や心疾患でも認める
  • 肺高血圧合併例:聴診にて肺動脈性Ⅱ音、Ⅲ音・Ⅳ音(奔馬調律)、頸静脈怒張、四肢浮腫

間質性肺疾患を疑う時の検査

血液検査

  • 活動性指標:LDH、CRP
  • 間質性肺炎マーカー:KL-6、SP-D、SP-A

*KL-6は、Ⅱ型上皮細胞、気管支上皮細胞、膵管や乳管の上皮細胞の管腔側に発現している。間質性肺疾患で肺胞上皮傷害に伴う肺胞・毛細血管透過性亢進によりKL-6が血流に逸脱し、傷害上皮を被覆するため増殖した再生Ⅱ型上皮細胞がKL-6を過剰に発現するため、BAL液と血清中のKL-6が上昇する

*SP-D、SP-Aは、肺特異的にⅡ型上皮細胞とクラブ(クララ)細胞から産生・分泌され、肺胞上皮傷害で血流に逸脱する。

*KL-6、SP-D、SP-Aは非小細胞肺癌で、KL-6は乳癌、膵癌、卵巣癌でも上昇することがある(過敏性肺炎ガイドライン2022より)

<間質性肺炎における感度特異度> Am J Respir Crit Care Med. 2002 Feb 1;165(3):378-81.

ILD患者33名(特発性肺線維症21例、膠原病関連12例)と対照群82名(細菌性肺炎12例、健常者70名)

  • KL-6(カットオフ値 465 U/ml):感度93.9%、特異度96.3%
  • SP-D(カットオフ値 48.2 ng/ml):感度81.8%、特異度86.6%
  • SP-A(カットオフ値 116 ng/ml):感度69.7%、特異度95.1%

画像検査

  • 胸部X線:感度63%、特異度93%(JAMA. 2024 May 21;331(19):1655-1665)

所見:両側下肺の容積減少(示唆する所見:minor fissureの下方偏位、肺門から横隔膜までの距離の短縮)、両側のすりガラス影、浸潤影、びまん性の透過性低下、横隔膜陰影の不明瞭化(肺底部優位の線維化病変を示唆する)

  • 胸部CT:病型診断において感度91%、特異度71%(JAMA. 2024 May 21;331(19):1655-1665) 所見に関しては割愛

撮影方法:肺野条件1mmスライス+冠状断(牽引性気管支拡張と蜂巣肺を鑑別するため)

  • 呼吸機能検査:拘束性障害、拡散能(DLCO)の低下

原因 200以上の疾患があると推定されている

・特発性(約30%以上)

 二次性を除外して診断

・二次性 まずはここの精査!

1)自己免疫関連:膠原病・血管炎 (約25%)

  • 膠原病関連ILD(CTD-ILD)の有病率は、基礎疾患によって異なる
  • 膠原病関連ILDでは膠原病が先に診断されていることが多いが、初発症状となることもある。特に特発性炎症性筋炎で多く、7.2-37.5%でILDが筋炎症状に先行する

2)曝露関連:職業・環境

  • 過敏性肺炎(約15%)
  • 塵肺症、じん肺症

3)医原性:薬剤性、放射線

  • 抗がん剤、免疫チェックポイント阻害薬、生物学的製剤、抗リウマチ薬、抗菌薬(ニトロフラントイン)、抗不整脈薬(アミオダロン)、ブレオマイシン、漢方薬など
  • 放射線治療

4)サルコイドーシス

サルコイドーシス患者の90%以上で肺病変を認める

5)感染症:ウイルス、細菌、抗酸菌、真菌

6)そのほか

  • 好酸球性肺炎
  • 悪性腫瘍:血液悪性腫瘍、癌性リンパ管症
  • まれなもの:肺胞蛋白症(PAP)、肺リンパ脈管筋腫症(LAM)、肺ランゲルハンス細胞組織球症(PLCH)など。⇒固有の疾患表現型を有する

原因はLancet. 2022 Sep 3;400(10354):769-786,頻度はJAMA. 2024 May 21;331(19):1655-1665参照

*15-20%の症例では、精査を行っても診断基準による分類ができない(unclassifiable interstitial lung disease) Lancet. 2022 Sep 3;400(10354):769-786

原因の鑑別:臨床所見+画像所見(+病理所見)から行う

<発症経過と鑑別診断> 

  • 急性期(数日から数週間)
  • 亜急性期(1-3カ月)
  • 慢性期(3カ月以上~年単位)

Lancet. 2022 Sep 3;400(10354):769-786.をもとに作成

<胸部CT所見と鑑別診断>

Lancet. 2022 Sep 3;400(10354):769-786.をもとに作成

原因精査としての問診

  • 膠原病関連:関節痛、手指のこわばり・腫脹、レイノー現象、皮疹、筋痛、筋力低下、リンパ節腫脹、眼・口腔乾燥
  • 曝露関連:カビ(浴室のカビ)、加湿器使用、羽毛製品使用(羽毛布団・ダウンジャケット)、鳥接触歴(隣人の鳥飼育、周囲環境の野鳥、鶏糞肥料の使用)、粉塵・アスベスト曝露歴、塗装工(自動車塗装)、お菓子製造(小麦粉)、コーヒー豆塵埃、きのこ栽培 
  • 薬剤、サプリメント、健康食品の使用歴
  • 放射線照射歴
  • 喫煙歴

原因精査としての身体診察

<膠原病で認める症状・身体所見>

  • 関節リウマチ:末梢関節の腫脹・疼痛、朝のこわばり、リウマトイド結節(肘の伸側前腕部に最も生じやすい、その他機械的刺激を受けやすい部位手指伸側・仙骨部・後頭部などに生じやすい)
  • 全身性エリテマトーデス:蝶形紅斑(鼻梁を越えて連続した左右対称性の紅斑で鼻唇溝は超えない。鼻背に皮疹があるとより特異性が高い)、非瘢痕性脱毛(活動性が高い時に認めやすい)、口腔内潰瘍(多くは無痛性、活動性が高い時に認めやすい)、レイノー現象(初発時)、関節炎(活動性が高い時に多い、初発症状としても多い)
  • 全身性硬化症(全身性強皮症):レイノー現象、爪郭毛細血管異常、皮膚硬化(四肢末端から始まるため手指を確認)、指尖部潰瘍、毛細血管拡張症(顔面、手指、口唇、前胸部に好発)
  • 多発性筋炎/皮膚筋炎:体幹・四肢近位筋・頸筋・咽頭筋などの筋力低下⇒階段の上りにくさ、Gowers徴候(しゃがんだ状態から保持なしでの立ち上がりが困難)、構音障害、誤嚥、窒息。筋痛、ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候・丘疹、逆ゴットロン徴候、機械工の手(mechanic’s hand)、ショール徴候、V徴候(前胸部のV字形の紅斑)、耳輪・対輪の紅斑、ケブネル現象(正常皮膚への物理的刺激で原疾患と同様の皮膚症状が出現)⇒むち打ち様紅斑、皮膚潰瘍
  • 混合性結合組織病:レイノー現象(初診時よりほぼ全例で認める)、指や手背の腫脹(ソーセージ様手指、swollen hand:初発時より約80%に認め、SScと異なり全経過を通して認める)。無菌性髄膜炎や三叉神経障害はMCTDに特徴的。
  • シェーグレン症候群:ドライアイ、ドライマウス、関節痛

膠原病に伴う間質性肺疾患診断・治療指針2025. より

原因精査としての追加検査

1)血液検査

・抗体検査:RF、抗CCP抗体、抗核抗体、抗SS-A/Ro抗体、抗ARS抗体、MPO-ANCA、PR3-ANCA

・血清特異的IgG抗体(Trichosporon asahii、鳥抗原:セキセイインコ、ハト):⇒感作されただけの可能性もあり臨床経過に合わせて結果は解釈

  • Trichosporon asahii抗体は感度87%、特異度96%(カットオフ値 0.15 CAI)と高い 
  • 鳥抗体は、カットオフ値をハト24.6mgA/L, セキセイインコ8.7mgA/Lとし、いずれかまたは両者が陽性の場合を陽性と判定した場合、抗原曝露と関連した急性症状(発熱や咳嗽の出現など)を伴う過敏性肺炎では感度85%、特異度80%だが、急性症状がない慢性経過の過敏性肺炎では感度31%と低い、特異度は80%

 ⇧過敏性肺炎診療指針2022より

・感染症マーカー(β-Dグルカンなど状況に応じて)

・アンジオテンシン変換酵素(ACE):サルコイドーシスを疑う場合

<自己抗体の提出項目に関して>

  • 膠原病に伴う間質性肺疾患診断・治療指針2025では、ILD症例に行う最初の自己抗体スクリーニングは、「RF、ACPA(抗CCP抗体)、抗核抗体、抗SS-A/Ro抗体、抗ARS抗体、MPO-ANCA、PR3-ANCA」とされている
  • RF、抗CCP抗体:RAの可能性を評価
  • MPO-ANCA、PR3-ANCA:血管炎の可能性を評価 ⇒偽陽性が少ないため陽性例では積極的に全身の血管炎を探しにいく
  • 抗核抗体(ANA):SLE、MCTD、SScで陽性率が高くスクリーニングに最適であり、最初から抗Sm抗体、抗RNP抗体、抗セントロメア抗体などは出さない。SjS、PM/DMでは感度は十分ではない
  • 抗SS-A抗体、抗ARS抗体、抗MDA5抗体:施設によっては抗核抗体で検出されない(cytoplasmicパターンとして検出されることもある)
  • 抗SS-A抗体:感度はは高いが特異度は低いためRAやSScでも陽性になる。抗SS⁻-B抗体:感度が低いものの特異度が高い。 ⇒抗SS-A抗体(-)で抗SS⁻-B抗体(+)となることはほとんどないため抗SS-A抗体をスクリーニングとして提出
  • 抗ARS抗体:陽性例はILDが筋炎に先行する症例がありスクリーニングする
  • 抗MDA-5抗体:皮膚筋炎らしい患者で提出。抗MDA5抗体検査はDMの確定診断のもとで保険適応となるためスクリーニングでは行わないが、典型的な皮膚症状や筋症状がない抗MDA5抗体陽性ILDの報告もある。

*抗ARS抗体は6種類(抗Jo-1・PL-7・PL-12・EJ・OJ・KS抗体)がよく遭遇する。抗ARS抗体検出ELISA法は、リコンビナント蛋白としてJo-1・PL-7・PL-12・EJ・KSの5抗原を混合して作られており、抗OJ抗体は検出できない。

膠原病に伴う間質性肺疾患診断・治療指針2025. をもとに作成

2)喀痰検査

  • 塗抹、培養
  • 細胞診:癌を疑う場合

3)気管支鏡検査

  • 気管支肺胞洗浄(BAL):特定の二次性間質性肺疾患を疑う際に有用

リンパ球増多:過敏性肺炎、好酸球増多:好酸球性肺炎、薬剤誘発性肺障害を示唆する。その他、肺胞蛋白症(PAP)、肺ランゲルハンス細胞組織球症(PLCH)の診断や、感染症や悪性腫瘍の除外にも。

  • 経気管支肺クライオ生検(TBLC:transbronchial lung cryobiopsy)、外科的肺生検:上記検査にても診断に至らない場合に検討

治療:診断の専門性が高く、呼吸器内科へ相談

<急性増悪時の対応>

  • IPF以外の急性増悪に関する知見は乏しく、実臨床での治療はIPRの急性増悪に準じる
  • 流れ:診断⇒気管支肺胞洗浄(BAL)〔呼吸状態に応じて行うか検討〕⇒治療
  • 治療:ステロイドパルス(+免疫抑制薬) *感染症の合併を否定できないため抗菌薬を併用
  • 治療前にACPも忘れずに:予後不良なことも多いため
  • 治療効果判定:臨床所見、CRP、LDH、間質性肺炎マーカー(KL-6, SP-D, SP-A)、胸部Xp

レジデントのための呼吸器診療最適解より

参考文献

  • Wijsenbeek M, Suzuki A, Maher TM. Interstitial lung diseases. Lancet. 2022 Sep 3;400(10354):769-786. doi: 10.1016/S0140-6736(22)01052-2. Epub 2022 Aug 11. PMID: 35964592.
  • Maher TM. Interstitial Lung Disease: A Review. JAMA. 2024 May 21;331(19):1655-1665. doi: 10.1001/jama.2024.3669. PMID: 38648021.
  • Ohnishi H, Yokoyama A, Kondo K, Hamada H, Abe M, Nishimura K, Hiwada K, Kohno N. Comparative study of KL-6, surfactant protein-A, surfactant protein-D, and monocyte chemoattractant protein-1 as serum markers for interstitial lung diseases. Am J Respir Crit Care Med. 2002 Feb 1;165(3):378-81. doi: 10.1164/ajrccm.165.3.2107134. PMID: 11818324.
  • 日本呼吸器学会過敏性肺炎診療指針2022作成委員会, 編. 過敏性肺炎診療指針2022. 東京: 日本呼吸器学会; 2022.
  • 日本呼吸器学会・日本リウマチ学会合同膠原病に伴う間質性肺疾患診断・治療指針2025作成委員会, 編. 膠原病に伴う間質性肺疾患診断・治療指針2025. 第2版. 東京: 日本呼吸器学会・日本リウマチ学会; 2025.
  • 中島啓. レジデントのための呼吸器診療最適解: ケースで読み解く考えかた・進めかた. 東京: 医学書院; 2020.